ぼさぼさの長髪。ざっくりとまとった着物に袴(はかま)。開けっ広げに土佐弁を繰り出し、豪胆かつ緻密(ちみつ)でしかも人情味にあふれ……。われらに擦り込まれた坂本竜馬のイメージはこんなところだろう。理想のリーダー像の定番でもあるらしい。
▼この役に挑んだ俳優は数知れず、1970年代の映画「竜馬暗殺」で原田芳雄さんが見せた熱演などが懐かしい。もちろん今年はNHKの大河ドラマで福山雅治さんが演じるナイーブな竜馬が活躍中だ。かの謎多き志士の姿も世につれ、と思っていたら鳩山邦夫元総務相も「竜馬になりたい」と自民党を脱藩した。
▼薩長同盟を仲介した竜馬よろしく、反執行部の面々を結びつける役目を果たすつもりだという。意気軒高なご本人ではあるが、記憶に新しいのは「かんぽの宿」問題やら東京中央郵便局の建て替えの一件やら、民営郵政へのあくなき抵抗だ。それに兄の由紀夫首相と同様、母親からの「子ども手当」の過去もある。
▼その兄の政権は発足から半年でもう青息吐息。ここはたしかに攻めどきだろうに、この人が竜馬だと聞くとドラマに妙にあざとい雰囲気が漂ってしまう。自らは黒子に徹する、はずが何とも大げさなパフォーマンスだ。行き詰まりそうな兄上を救うための、じつは手のこんだ兄弟同盟というわけではないだろうが。