HTTP/1.0 200 OK Age: 349 Accept-Ranges: bytes Date: Tue, 16 Mar 2010 20:15:22 GMT Content-Length: 7623 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Last-Modified: Mon, 15 Mar 2010 21:44:31 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

春秋(3/16)

 庶民の哀歓を細やかに描く小津安二郎監督の無声映画「大学は出たけれど」が公開されたのは1929年。世界恐慌の年だ。就職できなかったことを親に言えず四苦八苦する主人公の姿は共感を呼び、映画名がそのまま流行語になった。

▼80年後、大卒の就職難は中国で新語を生んだ。「蟻族」。文字通り「アリのような人々」と訳せばニュアンスまで伝わる気がする。学歴に見合う職を得られず、家賃を抑えるため都市近郊に群居し片道2時間もかけて通勤する、そんな若年層を指す造語だ。昨年に出た同名の本がベストセラーとなって、広まった。

▼昨年度の中国の大卒者の就職率は7割強とされる。政府の強力なてこ入れ策のおかげで世界に先駆けて景気が回復したと宣言した中国でも、雇用は世界的な不況の直撃を免れなかったようにみえる。だが実は大卒の就職難は年来の構造問題だ。「アリのような人々」の数は北京周辺だけで10万を超える規模という。

▼「自分を失敗者とは思わない。まだ成功していないだけだ」。北京郊外の「蟻族」の一人が、この新語を生んだ本に寄せた言葉は胸を打つ。日本でも今年度の大卒予定者の就職内定率は過去最悪だという。就職が決まらず身を焦がす思いで卒業式を迎えた若者たちに贈りたい。君たちはまだ成功していないだけだ。

社説・春秋記事一覧