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天声人語

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2010年3月17日(水)付

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 初代林家三平さんに、三軒並んだラーメン屋の小咄(こばなし)がある。右端が「日本一うまい」と看板を出すと、左端は「世界一」できた。困った真ん中のおやじ、寝ないで考えたのが「入り口はこちら」。そんな爆笑王の高座を思い起こす異聞が、福岡から届いた▼博多ラーメンの「元祖長浜屋」は、麺(めん)だけのお代わり、替え玉発祥の店として知られる。袂(たもと)を分かった元従業員らが昨年末、向かいに「元祖ラーメン長浜家(け)」を開いた。4月には、そこの一人が「元祖長浜家」を近所に出すという▼三つの「元祖」がトンコツで競うことになる。あつれきを承知でそう名乗るからには、あとの二つも腕に覚えがあるのだろう。三平師匠ならずとも「もう大変なんすから」である▼麺とスープ、具だけの作りなのに、ラーメンほど深く研究されている外食はない。職人たちは独自の味を追い求め、行列のできる店がテレビや雑誌で紹介される。食べ手にも、一口すするだけでダシを当てる達人がいる▼行列の元祖といえば、つけ麺を考案し、業界で神様と呼ばれる大勝軒(たいしょうけん)(東京)会長山岸一雄さんだろう。理想の一杯を素朴に語っている。「毎日食べても飽きがこなくて体にもいい。成長期の子どものための栄養満点のスープであったり……」。鬼の異名をとるラーメン店主、佐野実さんとの対談だ▼元祖を争う伝統と、目新しさを競う情熱、そして神も鬼もいる話題性が、この国民食の爛熟(らんじゅく)を支えているらしい。どんぶりの中に広がる、数百円の小宇宙よ。日本人の舌は、つくづく勤勉だと思う。

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