北や西からの風が東の風に変わると、春到来という気分になる。春の小風を「東風(こち)」と呼ぶのは、小を意味する「こ」と風を示す「ち」が結び付いたためだ▼馬の耳は春風に吹かれても反応しないように、人の意見を無視する態度を「馬耳東風」という。出典は李白の詩だ(槌田満文著『四季ことわざ辞典』)▼人の意見に丁寧に耳を傾ける鳩山由紀夫首相は、馬耳東風という言葉からは遠いところにいる人だと思ったが、例外もあるようだ。きょう衆院本会議で法案が可決される高校の授業料無償化で、焦点の朝鮮学校は当面、除外されることになった▼第三者機関による教育内容の検討を経て判断するという。得意の判断の先送りだが、鳩山さんの言動を振り返ると、最初から「除外」の結論ありきだったように感じる。国会答弁で意欲を見せたはずの朝鮮学校の視察に足を運ばず、連立を組む社民、国民新両党の声や日弁連などの批判にも耳を貸さなかった▼朝鮮学校の児童生徒の半数以上は韓国籍だという。日本の大半の大学は、朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認めており、東大など難関大学にも合格者を出している現実がある▼なによりも日本で生まれ育った在日三、四世の子どもたちは、非道な北朝鮮の拉致とは無関係だ。国連の人種差別撤廃委員会が改善を勧告する見通しだという。「友愛」があせて見える。