HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 15 Mar 2010 00:15:59 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:クロマグロ もはや『国際食』だから:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

クロマグロ もはや『国際食』だから

2010年3月15日

 野生生物の国際取引を規制するワシントン条約締約国会議が開幕し、クロマグロが俎上(そじょう)に載っている。「国際食」たるにふさわしい管理の知恵が示せるか。魚食文化の未来を占う会議である。

 昨年十月、環境保護に熱心なモナコが、大西洋・地中海産クロマグロをワシントン条約の付属書1に掲載するよう提案した。欧州連合(EU)と米国がこれに同調し、採択の見通しが強まった。

 付属書1に掲載されると、学術目的以外の国際取引が全面的にできなくなる。野生生物の保護が、国際社会の緊急課題であることは明らかだ。しかし、食材としてこれほどなじみ深い生き物が掲載された例はない。古くから日本人の食生活を支えてきたクロマグロが、パンダやゴリラと同列視されることには抵抗感がある。

 日本はクロマグロ供給量の約半分を大西洋産に頼っているが、不景気で消費自体が冷え込んでおり、禁輸されても、食卓への影響はすぐには出ない。だが、このままでは“保護主義”の流れが他の魚種へも波及しかねない。

 大西洋産の資源管理は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が手掛けている。漁獲枠では、一昨年は二割、昨年は過去最大の四割と減らしてきた。

 ところが密漁は後を絶たない。食べない魚も一網打尽にしてしまう混獲や、脂身をつくるため、幼魚を捕らえて地中海などのいけすで無理やり太らせる蓄養が、問題視されている。蓄養は繁殖のサイクルを止めてしまう。欧米がモナコに同調したのも、ICCATに任せていてはクロマグロが消滅するという、自然保護団体の主張に背中を押されてのことである。劣勢をはねかえすには、クロマグロが食べながら増やせる魚であることを、科学的、実証的に示す以外に道はない。

 秋田県では三年間禁漁という荒療治を施して、消滅寸前のハタハタを再生させたことがある。漁業国日本には、高水準の技術や知恵が蓄えられているはずだ。健康志向の高まりで、欧米や中国でも生食人気が急上昇、クロマグロは「国際食」になりつつある。だからなおさら、賢くいただく知恵とマナーが必要だ。

 最大消費国の日本政府は、とりすぎの反省も踏まえたうえで、資源の調査と管理をさらに進める姿勢を示してほしい。また、食文化を守り広げる気概を持って、締約国会議に臨んでもらいたい。

 

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