HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 13 Mar 2010 21:14:39 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:温暖化基本法 削減も成長も心配だ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

温暖化基本法 削減も成長も心配だ

2010年3月13日

 地球温暖化対策基本法案は、鳩山政権が掲げた理想から大きく後退した感がある。環境と経済の両立どころか、このままでは、低炭素社会をめざす新しいビジネスの潮流からも取り残される。

 基本法とは、制度や政策に関する理念を表す法律だ。だとすれば、政府の温暖化対策に関する理念は「あやふや」といわざるを得ない。温室効果ガスを二〇二〇年までに一九九〇年比25%削減、という理想は高い。だがあくまでも「全主要国が意欲的目標に合意した場合」との条件付きだ。今何を、どうすればいいのか、国民には、にわかに判断が付きかねる。

 削減への基本メニューも骨抜きにされた感がある。中でも排出量取引について、民主党の政権公約には、多排出事業所に総量規制の枠(キャップ)を課し、過不足分を売買(トレード)するキャップ&トレード(C&T)方式の導入が明記されていた。ところが、一部産業界への配慮から生産量に応じて排出枠を決める原単位方式との併記になった。

 原単位方式では、生産量に比例して排出量も増大する。英国が十年前に試みて、失敗に終わったやり方だ。EUはC&T市場を拡大しつつある。今は削減義務のない韓国も、昨年末に成立させた「低炭素グリーン成長基本法」で、一二年のC&T本格導入をめざしている。C&Tをてこにして、環境関連市場の成長を促す戦略だ。

 東京都は四月から独自のC&Tを開始する。実施を見越して、都内ではオフィスビルの省エネ化が進むなど、すでに効果が出始めている。政府は脱化石燃料を成長策とする世界経済の新潮流に、逆行しているのではなかろうか。

 原発推進には、確かに数値上の削減効果がある。が、風力や太陽光など再生可能エネルギーの普及にとってはブレーキだ。核廃棄物をどうするか、新設の立地や建設費の負担はだれが負うのか、国民の合意はできていない。

 基本法案の作成過程が不透明と産業界から批判され、前政権同様、土壇場でその意見を取り入れた。しかし、企業の負担は、結局商品価格に組み込まれ、削減の痛みを真に分かち合うのは国民だ。国民との対話こそ、十分とは言い難い。25%という数字が妥当であるのかも含め、これからよほど国民の意見を聞かないと、高い理想や基本法も看板倒れに終わってしまい、日本は経済的にも国際社会で取り残される。

 

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