美郷と美里が人気だったそうだ。「みさと」といっても女の子につける名前ではない。合併した町の名だ。平成の大合併で、前者が秋田、島根、宮崎の3県で後者が宮城と熊本の2県で誕生した。埼玉にも美里町はあるからややこしい。
▼合併をきっかけに「美しいふるさとを作ろう」というわけだ。気持ちはわかるが、ちょっと安易な気もする。歴史や風土とかかわりが小さい地名は、そもそも住民には根づきにくい面がある。様々な理由があったのだろうが、三重、和歌山、徳島の3県にあった美里村や美里町、美郷村は今回の合併で消えている。
▼10年以上続いた平成の大合併がこの3月末で終わる。村が消えた地域が13県ある一方で、市の数が町を上回った。市になれる人口5万人以上という条件を、合併時には3万人まで緩めたためだ。人口が減っているのだから自治体の再編は避けられなかったのだろうが、合併の目的とされる地方分権は進んでいない。
▼鳩山首相が「一丁目一番地」と呼ぶ「地域主権改革」はどうだろう。国が権限を分け与える分権では手ぬるいという趣旨だが、改革の中身はさほど変わらない。自民党には省庁の応援団の「族議員」がいたが、今の政府内に役人の声ばかりを代弁する「族大臣」はいないのか。看板倒れにならないように願いたい。