高速道路政策が迷走している。政府は12日、通行料金の割引に使っている財源を道路建設に回す法改正を閣議決定した。
「土日で上限1000円」など、高速道路の料金は現在、曜日や時間帯、車種ごとに様々な割引制度がある。自民党政権時代に、高騰した原油対策や景気対策として打ち出した。2008年度から段階的に始め、10年間で3兆円を投入している。
今回その財源の一部を、つながっていない高速道路の建設や2車線の路線の4車線化に使えるようにする。建設費にどの程度回すかは決まっていないが、当然、値上げになる。
政府は社会実験として6月ごろから、全国の約2割の高速道路を無料にすると発表したばかりだ。その一方で、値上げしてまで道路整備にお金を使うとはどういうことだろう。通行料は無料にして、必要な道路は効果を見極めたうえで税金でつくるという民主党のマニフェスト(政権公約)と明らかに矛盾する。
今回の法改正は民主党が昨年末に政府に提出した重点要望に沿ったものだ。道路建設を求める地方を意識した選挙対策だろう。
東京外郭環状道路のように大都市部には整備を急ぐべき路線がある。しかし、政府は法改正で捻出(ねんしゅつ)する財源を、地方の車線数を増やす拡幅事業に優先的に配分する可能性がある。それでは経済効果は限られるし、政府が昨年秋に決めた拡幅事業の凍結という方針を、早々に撤回することにもなる。
料金を無料にする道路も細切れの区間ばかりだ。これも予算に見合う効果があるとは到底思えない。
民主党は道路整備を民営化会社に一本化することも求めている。政府の指示で不採算な道路まで会社に整備させるなら弊害が大きい。この要望への対応はまだ決まっていないが、認めるべきではない。
私たちは高速道路の無料化は問題が多いと繰り返し指摘してきた。受益者負担の原則に外れるうえ、車の利用が増えれば、政府が推進する地球温暖化対策に逆行するためだ。
加えて今回の法改正である。迷走ぶりはあまりにひどい。政府や民主党は道路政策をどのように考えているのか、しっかりと説明すべきだ。