HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60579 Content-Type: text/html ETag: "f221d-1168-b65e2080" Expires: Thu, 11 Mar 2010 23:21:14 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 11 Mar 2010 23:21:14 GMT Connection: close 3月12日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

3月12日付 編集手帳

 地図で見る日本列島は斜めに連なっている。北日本と南日本でもよさそうなものを、東日本と西日本に分けているのはなぜだろう。相撲の番付も東と西、芝居の口上も「とざい、とうざい」、関ヶ原の合戦も東軍・西軍である◆国文学者の池田弥三郎さんによれば〈天子は南面す〉、天子は南を向いて立つのが定位置である――とする古代中国の思想に由来するという。南面する位置から見れば、世の中は右と左(西と東)に分かれて映る、と◆東西に比べて少々なじみの薄い南北だが、習慣に逆らって列島を「北」日本と「南」日本に分けてみたくなる季節があるとすれば今ごろだろう◆一昨日、“北国”青森県八戸市で1日の降雪量としては史上最高の61センチを記録した。同じ日、“南国”高知市では最速タイ記録でサクラの開花が発表されている。〈日本 長き琴のごと…〉とはフランスの詩人クローデルの詩の一節だが、早春の雪と花の便りほど、琴の長さを実感させてくれるものはあるまい◆名残の雪と会いに「北」へ、サクラ前線を迎えに「南」へ、行けもしない旅に胸の内が波立つのも南北の季節である。

2010年3月12日01時14分  読売新聞)
現在位置は
です