絶滅が心配な生物種の国際取引を禁じるワシントン条約会議が13日に中東のカタールで幕を開け、大西洋・地中海産のクロマグロを禁止対象に加える案を投票にかける。
約150カ国の加盟国の3分の2以上が賛成すれば、禁輸が決まり、国内のクロマグロ流通量は半減する。日本政府は漁獲規制の強化で、マグロ資源は守れると主張し採択に反対しているが、情勢は厳しい。
マグロの仲間は、海域別の5つの国際委員会が資源を管理しているが、漁獲量がこの30年で2倍に増え、資源量の減少が深刻だ。大西洋・地中海を担当する国際委員会でも漁獲規制を強めてきたが、捕りすぎが改まらなかった。
この海域のクロマグロの8割は、地球を半周し、日本人の舌にのる。クロマグロの資源管理には大消費国として日本に責任がある。
食材であるマグロを動物保護を目的とする条約で絶滅危惧種に指定するのは、極端な対応に思える。しかし、資源が減った現実を直視せざるを得ない。穀物や畜産物に比べ水産物は天然資源への依存が大きい。
太平洋産のクロマグロも漁獲規制が強まっている。クロマグロに比べて漁獲量が多いメバチマグロなども事情は同じだ。これらが禁輸の議論にのぼるのを防ぎ、末永くマグロを食べていくためには、資源を適正に管理し、節度ある利用をしていかなければならない。
マグロ需要は中国など新興国でも増え、健康志向から欧米でも消費は増えている。資源量の実態を正確に調べ、どの程度の漁獲なら資源を安定して維持できるのか、消費国の日本が国際的な資源管理をけん引していく必要がある。
マグロだけではなく、生物資源の持続的利用に向け管理を強める流れが国際的に強まっている。今年10月に、名古屋市で国連の生物多様性条約締約国会議が開かれ「2050年までに地球の生態系を現在より豊かにする」との目標の採択を目指す。自然保護区の拡大や、乱獲・違法伐採をなくす方策が議論される。
食糧や木材、油脂など生物資源の多くを日本は輸入に頼る。生態系の劣化や資源管理の失敗は、企業や消費者の利益にも影響する。