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天声人語

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2010年3月12日(金)付

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 政治家の言葉が干からびて久しい。見ばえと、聞こえのいいトークが重んじられる昨今だ。30年前、現職首相のまま逝った大平正芳さんは逆だった。風姿は鈍牛に擬せられ、口を開けば「アーウー」でも、弁舌に知性が感じられた▼論敵だった共産党の不破哲三氏は「国会での答弁にしろ、討論会での発言にしろ、議事録を起こしてアーウーを抜くと、きちんと筋の通った文章になっている……なかなか信頼できる協議相手でした」と回顧している▼経済から文化重視へ、地球社会への貢献など、示した未来図も真っ当だった。性に合わない壮絶な派閥抗争が命を縮めたが、評価は没してなお高い。きょうが生誕100年にあたる▼池田内閣の外相時代、ライシャワー駐日米大使から朝食に誘われ、核持ち込みの解釈が日米で違うと知る。これをぐっと腹に納めて「暗黙の合意」が成立した。それでも急死する直前まで、真相の公表を何度か試みたという。「密約」の存在は終生、心のトゲだったに違いない▼首相時代に官房副長官で仕え、師と仰ぐ自民党の加藤紘一氏は「思索の人」と評した。ある時、理想の国土を説いたそうだ。「地方都市が栄え、町はずれの鎮守の森から祭りばやしが流れる」。田園都市構想の原風景だろうか▼経済や社会の不備を家庭が補えればと念じながらも、「望ましい家庭のあり方を政府が示すのはよくない」とクギを刺した。言葉の数々をたどれば、日本と日本人への抑えの利いた信頼に行きつく。今や消え入りそうな「良質の保守」をそこに見る。

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