HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 10 Mar 2010 21:14:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:日米密約検証 外交記録を歴史に残せ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

日米密約検証 外交記録を歴史に残せ

2010年3月10日

 日米間の四つの密約を検証していた外務省有識者委員会の報告書では、文書管理のずさんさが明らかになった。外交政策の妥当性をめぐる検証を可能にするためにも、文書の徹底管理が欠かせない。

 これが政権交代の「果実」というものなのだろう。

 有識者委は、一九六〇年の日米安全保障条約改定時の「核持ち込み」と「朝鮮半島有事の基地使用」、七二年の沖縄返還時の「軍用地原状回復費肩代わり」の三つを密約と認定した。

 報告書を受け取った岡田克也外相も密約と認めた。いずれも自民党政権が否定していたものであり、大きな政策転換だ。

 有識者委は、沖縄返還時の「有事の際の沖縄への核再持ち込み」を密約と認めなかったが、当時の佐藤栄作首相の遺族が秘密議事録を保管していたことが判明した。これも、検証が行われたからこそ、発見につながったのだろう。

 密約を結ぶに至ったのは、冷戦期、基地使用の制限を嫌う米国の軍事戦略と、反核・反基地感情が強まる日本の世論の間で、日本政府が苦渋の選択をしたという背景があったのかもしれない。

 しかし、冷戦終結後も密約を否定、国民を欺き続けた罪は重い。

 報告書は核持ち込み密約について「政府の説明はうそを含む不正直な説明に終始した」と断罪した。歴代首相、外相、官房長官はなぜ、そうした説明をしたのか、国民に明らかにする義務がある。

 さらに嘆くべきは、当然あるべき議事録、電報など交渉過程を示す文書が存在しなかったことだ。恐らく廃棄されたのであろう。

 外務官僚に、交渉記録を保存し、評価を後世に委ねる心構えが欠如していたことがうかがえる。

 外交記録は、国家や国民の歴史そのものだ。都合が悪いからといって廃棄することは許されない。可能な限り、文書廃棄の責任を問うべきだ。

 外交文書は作成三十年後に公開するのが原則だが、対象のうち二万件が公開されていない。この中には、日ソ国交回復、日韓国交正常化、沖縄返還協定、日中共同声明などが含まれているという。

 今後、専門家らの助力を得て、公開を急ぐ必要がある。

 ドイツ帝国の初代宰相ビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と語ったという。

 歴史に学び、過ちを避けるためには、正しい記録を残し、広く公開することが大前提である。

 

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