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若手芸人のネタに、バス停を毎日少しずつ動かし、2年で家の前まで持ってくるというのがあった。「武勇伝」をまねる気はないが、大雨の日は戸口からバスに乗りたくもなる。バスから電車に乗り継ぐ人は、バス停が駅ならいいのにと思うだろう▼現実には、駅が乱立することはない。停車してばかりの路線では交通が滞るし、そもそも建設費が許さない。ところが、空に目をやれば採算そっちのけの「我田引港」が続く。乱立のトリを飾って、国内98番目の茨城空港がきょう開港する▼定期便はまずソウル、次いで神戸に1日1往復ずつ。成田や羽田が近すぎ、客足を案じる大手の航空会社は飛びたがらない。首都圏三つ目と言えば聞こえはいいが、バス停に電車をとめた印象はぬぐいがたい▼自衛隊の基地に滑走路を足した共用空港だ。税金の無駄と言われた静岡より安上がりだし、旅客ターミナルも倹約を旨とする。だが、格安航空会社とチャーター便が頼りでは先の需要が心細い▼国土交通省によると、08年度の利用実績が過去の予測に届いた空港は、羽田など8港だけだった。見通しの半分にも満たないところが33ある。空港欲しさゆえ、あるいは滑走路を増やすため、計画に合わせて予測をこしらえたらしい▼茨城も、年81万人の当初予測に対し20万人そこそことされている。空港近くに住み、韓国や神戸にちょいちょい行く人にとっては、戸口からバスが出るような便利さに違いない。そのバスはしかし、ほとんどの納税者を素通りし、イバラの道を行くことになる。