HTTP/1.0 200 OK Age: 17 Accept-Ranges: bytes Date: Tue, 09 Mar 2010 22:20:55 GMT Content-Length: 7637 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Last-Modified: Tue, 09 Mar 2010 14:19:47 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(3/10)

 どんなに丸く見える満月も、完全な球状ではない。地球も赤道の部分が少し膨らんでいて、厳密にいえば、楕円(だえん)の形をしている。完全無欠の「真球」は自然界では見つかっていない。最も近い存在は、機械部品のベアリングの玉である。

▼水力発電所の水車から中華料理の回転テーブルまで。およそモノが滑らかに動くすべての場所でベアリングは使われている。丸ければ丸いほど摩擦は小さい。玉を地球に見たてると、表面の凹凸が国会議事堂の高さほどしかない高級品もあるそうだ。神の手をしのぐ精密な球が、目につかぬ所で社会を回している。

▼白煙を上げて停車した新幹線「のぞみ」は、そのベアリングの破損が故障の原因だった。JR西日本が公表した写真が生々しい。機械の内臓が破裂したかのように、裂け目から歯車がのぞいている。超高速の回転で、砕けた部品が弾丸となって飛び出したらしい。もし人に当たったら、と考えると背筋が寒くなる。

▼ベアリングの原理は、ピラミッドの石を運んだ古代エジプト時代から変わらない。どこにでもあるありふれた部品への信頼が崩れれば、身の回りのあらゆる工業品への信頼が成り立たなくなる。車両の点検や管理に手ぬかりがあったのか。製品そのものに欠陥があったのか。真球に迫る技に陰りがないことを祈る。

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