鳩山政権が掲げる地域主権改革が本格的に動き出す。政府は2つの関連法案を閣議決定した。
ひとつは国と地方が協議する機関を新たに設置する法案だ。2000年の地方分権一括法の施行で法律上は国と地方は「対等」な関係になった。しかし、国が決め、地方が従う構図は基本的に変わらなかった。
新たな機関は官房長官、総務大臣、財務大臣、全国知事会の代表らで構成する。地方にかかわる政策を幅広く対象とし、その企画立案の段階から自治体が参加する。
昨年末の子ども手当を巡る論議のように、政府と自治体が政策を事前にすり合わせることは今後ますます重要になる。協議機関の法制化は知事会などがかねて要望していただけに、一歩前進と評価したい。
法案は双方が協議結果を「尊重しなければならない」と明記した。自治体側も都市と地方で意見が対立しがちなだけにその責任も問われる。
もうひとつは、政府が昨年末に立ち上げた地域主権戦略会議の設置法案だ。国の「ひもつき補助金」を自治体が使い道を決められる一括交付金に変える改革や、国の出先機関の廃止案などを戦略会議で今後検討する。夏までに基本的な考えをまとめた戦略大綱を策定する方針だ。
政府は自民党政権時代に発足した地方分権改革推進委員会を廃止し、代わりに戦略会議を置いた。検討課題も分権委が2年半かけて審議し、すでに勧告済みの項目が多い。政権発足後半年で改革の舞台装置がようやく整ったというのが現状だろう。
当面の焦点は自治体を法令で細かに縛る「義務付け」の見直しだ。第1弾として、公営住宅の整備基準を条例に委ねるなど41の法律を改正することが決まった。しかし、分権委が昨年秋にまとめた勧告内容と比べるとほんの一部にすぎない。
政府は第2弾として新たに約750項目を検討する。公立高校の定員、保育所の入所基準、都市公園の面積基準などが対象で、3月下旬に各省庁がまず方針を示す。
第1弾の時は各省庁の政務三役の多くが見直しに抵抗する側に回った。今回はどうなるか。改革が看板の掛け替えに終わらないように、しっかりとした案をまとめてほしい。