HTTP/1.0 200 OK Age: 41 Accept-Ranges: bytes Date: Mon, 08 Mar 2010 23:20:30 GMT Content-Length: 7657 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Last-Modified: Mon, 08 Mar 2010 15:12:44 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

春秋(3/9)

 花粉と聞くだけで目鼻がむずつく季節だというのに、中国人作家の楊逸(ヤンイー)さん(45)が「私には花粉がたくさんついているかもしれない」といった話をしていた。スギの話ではない。イメージは、花粉や蜜(みつ)を集めるミツバチなのだそうだ。

▼きのう3月8日は「国際女性の日」だった。それにあわせ、東京で女性作家が文学論や人生観を披露する催しが開かれている。その席の発言である。「人が1カ所にとどまっていると、文化は発展しないんじゃないか。飛び回れば花粉がつく。花を咲かせて、蜂蜜(はちみつ)ができる。文化も同じで、人が動いて豊かになる」

▼何一つ言葉が分からぬ日本に来て、20年たって日本語で小説を書いた。そして2年前には、母国語が日本語でない作家として初めて芥川賞をとった。なるほど、「子供を2人連れて離婚したときは誰も部屋を貸してくれなかった」などという苦い蜜も含め、この国での体験を蓄えては栄養に変えていったのだろう。

▼ドイツの童話「蜜蜂マーヤの冒険」(高橋健二訳)の一節にこうある。「わたしの心は喜んだり驚いたり、いろいろなことを味わったり、冒険をしたりするように出来ているのだ。わたしはどんな危険も恐れまい」。思えばマーヤは雌、働きバチもみんな雌だが、男だって楊さんやマーヤに背を押された気になる。

社説・春秋記事一覧