米軍普天間基地の移設をめぐる政府・与党内の検討作業は、いまだに霧が晴れず、出口が見えない。
鳩山由紀夫首相は、5月末までの結論に「覚悟を持って臨む」と進退をかける考えを示唆する。世論調査での支持率が下がり、危険水域に近づく鳩山政権にとって事態は一段と深刻さを増している。
政府・与党の検討委員会は8日、社民、国民新党の両党が移設案を示した。このうち国民新党が示したキャンプ・シュワブ内へのヘリポート移設を軸とする、陸上案が有力な検討材料になるとされる。確かに社民党内で議論されてきたグアムや沖縄県外への移設に比べれば、米側が直ちに拒否する内容ではないが、これとても問題点が少なくない。
陸上案は2005年に守屋武昌防衛次官(当時)が提示した案だ。当時、地元沖縄県と米軍はキャンプ・シュワブ沖の浅瀬を埋め立てる案を支持していた。
守屋氏が陸上案を支持したのは、反対派の妨害を排除しやすく、工事がしやすいと判断したからだった。一方、米軍はキャンプ・シュワブ内の演習場が狭くなるうえ、住宅地への騒音対策も必要になると考えた。埋め立ての方が地元への経済効果が大きいとの声もあった。
現行の日米合意は、米側が浅瀬案を引っ込め、一部陸地、一部埋め立てとする内容である。これを陸上案に戻すとすれば、5年前の議論が蒸し返されるのは避けられない。名護市議会は8日、陸上案反対を全会一致で議決した。
鳩山政権の発足以前は、沖縄県、名護市、米軍、日本政府と当事者たちが程度の差こそあれ、日米合意を支持していた。しかし、この問題をめぐる鳩山政権の迷走の結果、沖縄の世論は県外移設に固まっている。小沢一郎民主党幹事長も県内移設に否定的とされており、迷走に拍車をかけている。
普天間移設は、日本の安全保障をめぐる問題である。政府が責任を持つ問題である。残念ながら、政府・与党内の議論には、この視点が欠けている。関係者の発言が揺れ続け、迷走するのは、この政権を支える人たちの間の安全保障をめぐる考え方に差がありすぎるからだろう。