他人が吸うたばこの煙で深刻な健康被害にあう。そんなことがあってはならない。
厚生労働省はそうした受動喫煙の被害を防ぐため、病院や飲食店などの公共施設を原則として禁煙とするよう各地方自治体に通知した。神奈川県は飲食店などに禁煙か分煙を罰則つきで義務付ける「受動喫煙防止条例」を4月から施行する。
たばこは禁制品ではないので「吸う自由」を尊重し、吸える場所を用意する必要がある。だが、たばこは約200種類の有害物質を含み、肺気腫や肺がんなどの原因になる。喫煙しない人にはとても迷惑だ。
国や自治体が規制するだけでなく飲食店や商店などは、進んで受動喫煙を防ぐ努力をしてほしい。
厚労省の通知は官公庁や病院を全面禁煙が望ましいとし、飲食店などで営業に大きな支障が及ぶ場合「分煙など」の対応を求めた。分煙では喫煙・禁煙両区域の境に仕切りを設け、煙が禁煙の区域に流れ込まないように促している。
飲食店などが喫煙者だけを受け入れることにし、そのことを看板などに表示していれば「分煙など」と同じにみなし認めると同省はいう。
ただしこの通知の内容はあいまいな部分が多いうえ、罰則がないので強制力に欠ける。同省によれば、通知のもととなった健康増進法が受動喫煙防止を努力義務にとどめているので、法律を超えることまで通知に書けないのだという。
神奈川県は小規模の飲食店などを除き、禁煙か分煙を義務付け、違反者には5万円以下(店の場合)の過料を科す。この方がすっきりするし飲食店がライバルをにらみながら禁煙にするかどうか悩むこともない。国も健康増進法を改正して受動喫煙防止を義務にすべきだ。
また喫煙者の権利は尊重するとしても、成人男性の30%強という喫煙率は欧米と比べ高い。これは値段の差とも関係がある。たばこ税の増税で10月から1箱100円程度の値上げとなる見通しだが、マイルドセブンはいま300円。ニューヨークの同程度の銘柄の949円、英国の856円に比べかなり安い。
健康を守るため、一層の増税と値上げを考えてもよいのではないか。