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冬季五輪のテレビ解説に引き込まれて、カーリングという競技の楽しさを教わった。ストーンを投じるたびに形勢が動き、打つべき手が変わる。赤い石の優勢を黄色の一投が覆し、黄の支配を赤の一撃が崩す面白さ▼ミリ単位の偶然が勝敗を分けもする。豪快にして繊細、心技体に加えて知が欠かせない。「一石を投じる」というが、氷上のチェスでは、一石が水面どころか状況を一変させる▼一つの石が、惑星の未来を変えることもある。恐竜を絶滅させたとされる小惑星の衝突について、12カ国の共同研究チームが「間違いなし」と結論づけた。各地の地層を詳しく調べた結果だ。6550万年前、直径10キロ以上の小惑星が今のメキシコ東部に超高速でぶつかったらしい▼直径200キロほどの衝突跡が確認されている。衝突でマグニチュード11の大地震、高さ300メートルの津波が起きたという。数字はどれも想像を絶する。大気中に飛び散った粉じんが太陽光を遮り、寒さと食料不足で多くの動植物が絶えた。巨体ほどもろかった▼小さな動物はこの試練を生き延び、やがて、進化の枝先から転げ出た人類がこの星の支配者となる。小惑星が地球をそれ、恐竜が健在だったらと考えてみる。ヤリと弓矢のご先祖様は天下を取れたろうか▼大宇宙に思いをはせれば、心技体も知も及ばぬ偶然に生かされていると感じ入る。恐竜の全盛に終止符を打ったのは、ただ一つの小惑星だった。つい、おごれる者は久しからずの戒めが胸をよぎる。二つ目はいつかと気をもんでも仕方ないのだが。