「核持ち込み」など四つの日米密約を検証していた外務省の有識者委員会が近く報告書を公表し、政府は一連の密約を否定した従来の見解を見直す。これを契機に外交への不信解消に努めてほしい。
四密約とは、一九六〇年の日米安全保障条約改定時の「核持ち込み」と「朝鮮半島有事の基地使用」、七二年の沖縄返還時の「軍用地復元補償費肩代わり」と「有事の際の沖縄への核再持ち込み」。
このうち沖縄への核再持ち込みに関しては、六九年十一月に当時のニクソン米大統領と交わした秘密議事録を、佐藤栄作元首相の遺族が保管していたことがすでに判明している。
朝鮮半島有事の際、在日米軍が事前協議抜きで戦闘作戦行動に出ることを認める文書も、外務省の内部調査で発見されている。
歴代自民党政権は、いずれの密約も存在を否定してきた。
密約を結ばざるを得ない国内外の状況があったにせよ、国民を欺き続けたことは否定できない。「国家の嘘(うそ)」に終止符を打てれば政権交代の「果実」になる。
核持ち込みと復元補償費肩代わりは、衆院外務委員会で近く関係者の参考人招致が行われる。引き続き解明に努力してほしい。
核持ち込みや沖縄への再持ち込みについて、米歴代政権が「密約」をどう引き継いでいるか、米側に見解をただすことも必要だ。
外交文書は、作成から三十年後に原則公開する外務省内規があるが、公開の判断は外務官僚に任され、非公開となる例が多い。
外務省に都合の悪い情報を隠そうとしたのなら許されない。
外交文書は廃棄せず、すべて保管する。一定の年限後に原則公開し、外交活動の妥当性を後世の判断に委ねる。そうした原則を早急に確立することが不可欠だ。
岡田克也外相は、公開判断に第三者を交え、国益にかかわる際は大臣、副大臣が判断すると表明した。外相の取り組みを注視する。
東郷和彦元条約局長が作成した密約問題に関する資料が二〇〇一年の情報公開法施行前に廃棄されたとの報道がある。事実なら言語道断だ。徹底究明を望む。
鳩山内閣は密約検証を受けて、核兵器を「持たず」「作らず」「持ち込ませず」の非核三原則を堅持する方針だという。
三原則は唯一の被爆国、日本の国是であり、「核なき世界」は国際社会の願いだ。鳩山内閣の堅持方針を支持する。
この記事を印刷する