財政悪化で信用不安に苦しむギリシャが、追加の歳出削減策を決めた。パパンドレウ首相はドイツに続いてフランス、米国を歴訪する予定で、信認の維持に必死だ。金融市場の混乱は一時的に鎮まっているが、綱渡りの構図は変わっていない。
ギリシャが追加する財政再建策は付加価値税率の2%引き上げや公務員賞与の抑制、年金の支給開始年齢の引き上げなどだ。2009年に国内総生産(GDP)の12.7%に上昇した財政赤字比率を10年中に4ポイント下げる目標で、追加策は2ポイント分の削減につながるとみられている。
アテネでは労働組合のデモが断続的に起きているが、パパンドレウ首相は「国家の生き残り」を訴え、歳出削減の貫徹に決意を見せる。欧州連合(EU)はギリシャ側の自助努力が問題に対処する大前提であるという立場を明示しているからだ。
金融市場はギリシャの追加策をひとまずは評価したようだ。4日の10年物国債の入札は発行予定額の3倍の応募があり、ユーロの為替相場や欧州などの株価もやや持ち直した。
だが、状況が一気に好転すると油断はできない。ギリシャは4月以降も多額の国債償還を控える。歳出削減策の実現が危ぶまれたり、財政不安を抱えたポルトガルなどで混乱が生じたりして、不安が再燃する展開も十分に予想される。
財政赤字を粉飾したギリシャへの安易な支援には、ドイツなど助ける側の世論は極めて厳しい。メルケル独首相とパパンドレウ首相は会談後、ギリシャへの金融支援は「話し合わなかった」と口をそろえた。
とはいえ万一に備えた対策作りは水面下で進んでいるようだ。独政府系金融機関を利用してギリシャ向け融資に保証をつける案や、EU共同の救済基金の構想も伝えられた。単なる「口先介入」でのギリシャ支援には限界があり、市場は具体的な支援策を瀬踏みし続けるだろう。
欧州の首脳には投機筋への規制強化を求める意見も浮上しているが、足元のギリシャ危機の解決は別の話だ。財政は各国任せ、通貨は一つという矛盾を抱えたユーロが、各国でばらばらの民意に振り回されている。ユーロ不安は円高や世界株安につながる。日本も注視を怠れない。