HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 05 Mar 2010 20:14:52 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:イラク戦争検証 欧州から学ぶべきもの:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

イラク戦争検証 欧州から学ぶべきもの

2010年3月5日

 イラク開戦から七年−。米国と連携した英国は戦争遂行の是非をめぐる検証を進め、五日にはブラウン首相が証人喚問に臨む。“大義なき戦争”に向き合おうという姿勢には見習うものが多い。

 イラク戦争はブッシュ前米政権が英国と始めたが、大量破壊兵器の開発や国際テロ組織アルカイダとの関係という疑惑は“幻”だった。開戦以来の死者は、米軍が中枢同時テロ犠牲者数を上回る四千人を超え、英国兵士は二百人近く、イラク国民に至っては約十万人にも上る。歴史的汚点だろう。

 目下国家再建が進行し、オバマ米政権は米軍撤退にかじを切ったが、戦争を客観的に総括するほどの余裕はない。

 ところが英国は違った。戦争の正当性や占領政策に疑問を持つ世論や野党の突き上げからにせよ、ブラウン首相が昨年七月、歴史学者や元外交官ら五人からなる独立調査委員会を設立。政府の機密書類を精査し、公聴会で政治家、外交官、軍、情報機関幹部を喚問し世界の耳目を集めてきた。

 「イラクは生物化学兵器を保有し四十五分以内に攻撃できる」。開戦前のブレア首相報告だ。ブッシュ政権も「イラクのウラン(核兵器の燃料)入手を英政府が突き止めた」と断じた。だが公聴会で外務省元幹部は「その情報は確度の高いものではなかった」、元法務長官は「開戦の合法性は疑問」と首相に伝えたと証言した。

 これに対し、一月末に登場のブレア氏は「フセイン政権の危険性を放置できなかった。開戦判断に誤りはなかった」と反論。開戦当時、ナンバー2の財務相だったブラウン首相も五日証言する。

 実は復興支援で部隊派遣したオランダがやはり独立調査委員会をつくり、同様の検証を先行させ、このほど「イラク戦争への政府の支持は国連決議に基づかず国際法違反だった」と結論づけている。

 日本では自民党小泉政権が開戦を早々と支持、復興支援への自衛隊派遣をめぐる議論などが国会でなされはしたが、第三者的な委員会で検証する動きは見られない。

 国柄や歴史観の違いは当然あるにせよ、民主主義を標榜(ひょうぼう)することは同じである。民主主義は国家のしたことを国民が知り、省みることができてこそ成立する。日本の地域紛争への対応や支援は今後も予想される。憲法や国際法を踏まえた検証の不可欠なことを欧州は教えているのではないか。

 

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