東南アジアの内陸国、ラオスのチュンマリ国家主席が2日から日本を訪問している。天皇、皇后両陛下と会見し、鳩山由紀夫首相と会談した。国交を結んで55年、ラオスの国家元首が公式に日本を訪れたのは初めてだ。意外な気がする。
▼日本はラオスに対する最大の援助国。産業に乏しいラオスにとって重要な外貨収入源は隣国タイなどへの電力輸出だが、その元手というべき水力発電施設の建設にも日本の援助が大きな貢献をしてきた。ラオスも日本への謝意を目に見える形であらわしてきた。たとえば捕鯨問題をめぐる外交での積極的な協力だ。
▼海に面していないラオスはもともと捕鯨に縁がない。にもかかわらず2007年、国際捕鯨委員会(IWC)に加盟し、それ以来、日本の立場を支持してきた。非捕鯨国の取り込みでは米国をはじめ反捕鯨国が先行し、多数派づくりを進めた。追い詰められている捕鯨支持派の中では、ラオスは貴重なメンバーだ。
▼大方の日本人には、なじみのない国だろう。人口の10倍ともいわれる数の不発弾が国内に残る。ベトナム戦争に伴う米軍の猛爆撃の後遺症だ。このためインフラの整備に手間とコストがかかり、経済開発も遅れがちだった。国家元首の公式訪問が実現したのを機に民間レベルの交流がもっと盛り上がれば、と思う。