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自然界などで、ささいな変化が重大な結果をもたらすことを「バタフライ効果」という。チョウの羽ばたきによる空気の震えが、巡り巡って地球の反対側で気象異変を引き起こす、との例えらしい▼嵐を呼ぶかどうかはさておき、チョウが飛ぶ様はどこか神秘的だ。昔は霊魂と結びつけて語られた。風に任せているようで、時に意思のようなものがのぞく。捕まりそうで、捕まらない。〈めちやくちやに手をふり蝶(ちょう)にふれんとす〉山口青邨(せいそん)▼「チョウ小型センサー」と題する記事を読んだ。東京大学の研究チームが、チョウの羽に検出器をつけて飛翔(ひしょう)の仕組みを調べているそうだ。センサーは1ミリ四方。シリコンの薄板のたわみで、羽にかかる空気の圧力を測る▼クロアゲハで実験したところ、飛び上がる時には通常の飛翔の倍の力がかかっていた。センサーの重さはチョウの0.15%というから、人ならミカンを持ち歩く感覚だろうか。トンボでも試し、虫が飛ぶ様子を解明したいという▼俳句の世界では、出が遅い大型のアゲハは「夏の蝶」とするそうだ。単に「蝶」といえば、これからの季題である。モンシロチョウは菜の花やキャベツ畑の上を、ポカポカと弾むように漂う。〈初蝶の触れゆく先の草青む〉野澤節子▼チョウの古名は「かわひらこ」とか。楽しげに舞う姿を目に浮かべれば、その語感にひざを打つ。この虫が呼ぶべきは、やはり嵐より春である。きょうは、冬ごもりの生き物がはい出るとされる啓蟄(けいちつ)だ。行きつ戻りつ、ひと雨ごとに季節のページがめくられる。