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川崎洋さんの詩に「夏の海」がある。大自然との会話を子どもたちに説きながら、こう結ばれる。〈それから/あの星とこっちの星とむこうの星と/勝手に結んで/きみだけの星座をつくるといい〉。どうにでもなる未来。それこそ、10代までの特権だろう▼それがどうも怪しい。就職という大人への入り口でひとたびつまずくと、起き上がりにくい社会になってきた。それも、景気の巡り合わせ、親の収入といった本人の力が及ばぬところで、未来が狭まりかねない▼大卒ばかりか、高校卒業予定者の就職内定率が芳しくない。昨年末で75%、沖縄や北海道では5割前後だった。とりわけ、家計の事情で大学や専門学校への進学をあきらめた未内定者は、背水の陣を破られた思いだろう▼授業料を払えない生徒も増えている。滞納ゆえに卒業できなければ就職どころではない。職探しの厳しさとあわせ、卒業クライシス(危機)と呼ぶそうだ。働く貧困層へと続く道である。彼らが10年後に「貧乏な親」になれば、貧困が再生産される▼自分を磨く時間が4年ある大学生と違い、原石にすぎない18歳にまで新卒での一発勝負を強いるのは酷ではないか。10代で先が見えてしまう国に、輝く未来があろうはずもない。国や自治体の音頭で敗者復活の仕組みがほしい▼むろん、一度や二度の失敗でふさぎ込むことはない。人生の残り時間が長いのは、それだけで大きな財産だ。くじけそうになったら、若さという星から夢という星に、まっすぐ、太い線を引き直そう。何度も、何度でも。