一週間ほど前の夜、東京都内のマンションに帰宅すると、一階の郵便受けの下にじっとしている茶色い生き物がいた。体長一〇センチほどのヒキガエル。その日、東京の最高気温は一八度を超えていた▼<蟇(ひきがえる)でてじんわりとひかり居り>(永田耕一郎)。冬眠を終えてはい出てきたカエルはこの句のごとく、じんわりと光っていた。寒の戻りでまだ冷え込む日もあるが、日一日と春めくのは心が弾む▼ところが、今の季節が一番嫌いという人も少なくない。そう、花粉症の症状が本格的に始まる時期なのだ。例年より飛散は少ないようだが、花粉症の人には苦しい季節がしばらく続く▼春の訪れにも華やぐ気分になれないのは、民主党も同じかもしれない。鳩山由紀夫首相、小沢一郎幹事長の「政治とカネ」の問題が尾を引く中、北海道教職員組合の違法献金事件が摘発された▼無党派の民主離れが進み、参院選は労組の支援が頼みの綱だったが、集票活動が鈍るのは確実だ。鳩山首相が企業・団体献金の禁止に前向きになったのは、逆風をかわしたいという思惑も透けて見える▼日本経団連は、企業・団体献金への関与を打ち切る方針を決めた。「身から出たさび」ではあるが、民主党がマニフェストに盛り込んだ献金禁止を実現する下地はそろった。政治資金規正法の改正に首相は本気で取り組むのか。国民は注視している。