HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 01 Mar 2010 22:14:51 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:チリ地震津波 避難は徹底されたのか:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

チリ地震津波 避難は徹底されたのか

2010年3月1日

 一月のハイチに次いで南米チリでまたも、大規模な地震が発生した。現地の被害も憂慮されるが、太平洋を経て押し寄せる津波は、日本にも届いた。災害への危機意識をもっと高めたい。

 チリで起きた巨大地震でまず思い起こされるのは、一九六〇年五月のものである。最大波高六メートルに達する津波が日本を襲い、北海道と本州の太平洋岸の各地で死者・行方不明百四十二人など大被害をもたらした。

 この時の教訓に基づき日本などの提唱で、太平洋津波警報センター(PTWC、在ハワイ)が設けられた。各国からの地震情報を分析し、津波の到達時刻など予測結果を提供するシステムで、今回も正常に機能したといえる。

 気象庁は東北地方の一部に大津波警報、北海道から沖縄までの太平洋沿岸を中心に津波警報、同注意報を発表した。これを受け自治体は住民に避難指示や避難勧告を出し、東名高速道路の規制やJRの一部線区の運転取りやめなども行われた。これらの措置もおおむね順調に実施と評価できる。

 問題は一般住民の対応である。六〇年のチリ地震津波で五十人以上の死者・行方不明を出した岩手県大船渡市は海岸に近い千七百八十八世帯四千九百四十七人に避難指示を出したが、市が把握した避難者は六百九十八人にとどまる。

 四四年十二月の東南海地震で、三重県大紀町錦地区は壊滅的な打撃を受けた。だが九百三十世帯二千五百二十一人に避難指示を出したにもかかわらず、避難所に来たのは百八十三人だった。

 津波の到達予想時刻が休日の午後に集中し、自宅を離れていた人や、自発的に安全な場所に避難していた人もいただろう。それらの事情を考慮しても、実際にはかなりの人々が避難しなかった疑いは残る。

 情報が伝えられても避難しないのは、「まさか本当に津波はこないだろう」「隣もまだ避難していない」という行動の正当化が、大きな理由と専門家は指摘する。本当に深刻な事態が生じたら、これほど危険なことはない。

 日本では津波は観測されたが、幸い深刻な被害は起きなかった。今回のチリ地震はプレートの境界を震源とする。東海地震、東南海・南海地震が現実に起き、震源がより身近なところで、短時間で大規模な津波が襲ってきてからでは遅い。もし空振りに終わっても、根拠の薄い思い込みを捨て、安全第一を心掛けるべきではないか。

 

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