HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60768 Content-Type: text/html ETag: "fcfca-1204-a6520a40" Expires: Sun, 28 Feb 2010 23:21:15 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 28 Feb 2010 23:21:15 GMT Connection: close 3月1日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

3月1日付 編集手帳

 琉球諸島にはヤドカリを人間の起源とみなす神話があるという。昔の世を「アマン(=ヤドカリ)ユー」すなわち「ヤドカリの世」と見た。ヤドカリが阿檀(あだん)という木の実を食べて人間に生まれ変わった、と◆榎本好宏さんの『季語語源成り立ち辞典』(平凡社)に教わった知識だが、天災に接するたびにこの神話が胸をよぎる。いかに高度な文明を築いても人間は、地球という名の荒ぶる巻き貝に宿りする寄宿人でしかない◆できることは、科学と情報と経験とを総動員し、家主のもたらす気まぐれな厄災からその都度、難を避けることだけだろう◆きのうはチリ巨大地震による津波の警戒に明け、暮れた。震源は地球の裏側でも津波は押し寄せる。“遠い国”も“近い国”もない。誰もが同じ、ひとつの星に暮らしている――当たり前の事実を、いまさらながら()みしめた方もあったはずである◆現在のところ、国内で人的被害は出ていないが、チリの被災地を思えば「幸いにも」と言い表す気持ちにはなれない。瓦礫(がれき)の下で、大勢が生死の境にあろう。球形の巻き貝に同居する友に、救いの手を急がねばならない。

2010年3月1日01時29分  読売新聞)
現在位置は
です