世界的に大流行した新型インフルエンザは、感染者の発生ペースが下がり終息に向かいつつあるが、再来の危険性はある。これまでに明らかになった不備な点を反省し、対策を見直してもらいたい。
世界保健機関(WHO)は今週、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高度の「6」にある警戒レベルを見直すかどうかについて議論した。アフリカの一部でまだ感染が拡大していることから最終的には見送られたが、日本を含め他の地域では感染者の発生は減少傾向にあり、早晩、終息するとみられる。
WHOによると、これまでに世界で一万五千人以上が死亡した。 わが国でも二百人近くが亡くなったが、季節性インフル並みで他の先進国よりも少ない。比較的少ない自己負担で医療機関において早期診断・治療を受けられたためだろう。こうした医療体制は今後も維持してもらいたい。
空港での水際対策に必要以上の医師や看護師など医療従事者を投入し、他の対策が手薄になり、その間に国内では渡航歴がなくても感染者が発生していた。昨春、メキシコでの最初の流行の際、死亡者が続出したうえWHOが当初、入国の際の検疫を重視していたこともあり、わが国が混乱したことは否めない。初期の空港検疫自体は誤りでないにしても、それ一辺倒になったことは反省材料だ。
対策が硬直した背景には、新型に対する「行動計画」が、鳥由来の新型という最悪のケースを想定していて、結果的には季節性と差がない病原性だった今回の豚由来の新型に対し「鶏を割くのに牛刀」になったことがあげられる。
それが過度な学級閉鎖、修学旅行の中止なども招いた。
今後は流行の状況を見ながら臨機応変に対応できる柔軟な「行動計画」にしたい。
新型の流行が下火になり、国産に加え輸入ワクチンも大量に余るだろう。これを無駄とみるか保険とみるかは意見が分かれるが、明らかになったのは、わが国は他の先進国に比べ、海外に依存せざるをえないほど国内のワクチン製造のインフラが著しく劣っていることだ。ワクチンをめぐっては過去に薬害など不幸な事例があるが、それを乗り越えてメーカーの製造体制を国が支援すべきだ。
一九一八年から三年続いたスペインかぜでは第二波以降病原性が高まり多数が亡くなった。今回も油断せず次に備える必要がある。
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