HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sun, 28 Feb 2010 02:15:02 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:高齢の認知症の女性が、ベッドに寝たきりになっている。胃に埋…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年2月28日

 高齢の認知症の女性が、ベッドに寝たきりになっている。胃に埋め込まれているのは直接、流動食を補給する「胃瘻(ろう)」という装置だ。終末期医療はどこまで必要なのだろうか? そんな疑問が自然に浮かぶ▼東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」(定員百人)の平均年齢は八十五歳超で認知症の人が九割。常勤の配置医として石飛幸三さん(74)が赴任したのは約四年前のことだ▼認知症の高齢者には嚥下(えんげ)障害が多く、食事が誤って気管に入ったり、胃瘻から注入した流動食が逆流したりして、肺炎を起こし入院する人が後を絶たなかった。石飛さんとスタッフが模索したのは、家族と面談を重ねながら、過剰な栄養補給を避け、入所者を穏やかに看(み)取る介護のあり方だった▼口からの食事でむせるなら量を減らし、胃瘻を通じた量も調整すると、肺炎で入院する人は減少した。経営は黒字に転じホームで自然に最期を迎える人が増えた▼石飛さんは、プロ野球の投手の血行障害の手術を世界で初めて成功させるなど著名な血管外科医だった。配置医になって初めて穏やかな自然死の実態を知ったという▼「今求められるのは、現代における新しい看取りの文化。特養はその任を実現することができる場所」と著書『「平穏死」のすすめ』で書いた。その実践は、医療と介護の現場に静かな波紋を広げつつある。

 

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