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北国のある地方では、立春のあと初めて雪を交えず雨だけが降る日を「雨一番」と呼ぶそうだ。足踏みして春を待つ、2月の紙上の人と言葉から▼「遠野物語」発刊から100年の岩手県遠野市。名所のカッパ淵で、運萬(うんまん)治男さん(61)はカッパの「守り人」を任じる。遠野の人は実際の出来事にカッパをからませて暮らしを伝えてきた。「カッパはいるとかいないとかいうもんでなくて、一人ひとりの気持ちの中で会うもんなの」▼秋田県では、国の重要無形民俗文化財のナマハゲが近年おとなしくなった。荒々しさが消え草食系の新世代が目立つそうだ。民俗学が専門の東北芸術工科大学の赤坂憲雄・大学院長(56)は「現代人は祭りのパワーを上手に使いこなす知恵を失いつつある」と案じる▼「ゲド戦記」の翻訳で知られる児童文学の清水真砂子さん(68)が青山学院女子短大を去る。最終講義で「すぐれた子どもの文学は、苦しくても生きてごらん、大丈夫と背中を押してくれる。みなさんもそんな一人に」▼本紙俳壇の選者金子兜太(とうた)さん(90)が毎日芸術賞の特別賞を受けた。贈呈式の挨拶(あいさつ)で「講評にある句〈男根は落鮎(おちあゆ)のごと垂れにけり〉は自分のことを書いたのであります」。「私のにはまだ落ち鮎程度の実体感がある、と。そのことを申し添えたい」に会場は大笑いとなった。九十翁の悠々たる貫禄(かんろく)である▼その金子さんが先ごろの本紙俳壇で選んだ一席に、足立威宏さんの〈里芋といふ極上の土食らふ〉。生かされてある実感は尊い。芋ばかりでなく人も味わいを増す。