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共通番号制―目的は社会保障の強化だ

 納税と社会保障に共通の番号を国民一人ひとりにつくる。菅直人副総理兼財務相が中心の閣僚級検討会が、具体案づくりに動き出した。

 所得や資産を正確に把握し、税や保険料の未納を防ぐには、共通番号が役に立つ、というだけではない。社会保障の強化と安定には不可欠であるとの考えが鳩山政権内で強まり、推進力となっている。

 民主党は政権公約で、減税と低所得者への給付金支給を組み合わせた「給付つき税額控除制度」や、所得に応じた保険料と最低保障年金がある新年金制度の創設を掲げた。

 これらの政策は日本社会の要請に応えるために必要であり、実行するには個人ごとの所得を正確につかむための納税者番号が欠かせない。それに社会保障のデータをどのように組み合わせるか、が鍵となる。

 具体的には、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の活用、基礎年金番号の利用、新しい番号をつくる、の3案を軸に検討を進め、来年の通常国会への法案提出をめざす。

 焦点となるのは、住基ネットのシステムを利用するかどうかだ。

 すでに国民全員に番号がある唯一の仕組みだ。最初のシステム作りだけで約400億円かかっており、二重投資を避けようとすれば活用が望ましい。

 だが重大な問題は、住基ネットが「個人情報もれや悪用の危険をどう防ぐのか」という国民の不安を拭(ぬぐ)えないまま発足したことである。導入の目的すらあいまいだった。

 不人気で利便性も乏しいため、ほとんど使われていない。民主党も導入時は慎重な姿勢だった。

 今回は政策の目的も利点も、明確にできるはずだ。鳩山政権は何よりも、番号制度の推進を打ち出した最大の理由が社会保障の強化にあることを国民にきちんと説明する必要がある。

 同時に、プライバシー保護を徹底するために、現行の住基ネットの制度を根本から作りかえることだ。

 そのためにはまず、土台の「基礎番号」と、税、年金、医療など日常的に国民が利用するそれぞれの番号に分けてデータベースをつくる。個人情報を1カ所に集めないので、万一情報が流出しても影響を小さくできる。

 番号の導入に伴うプライバシー保護の法律もつくる。利用目的の制限など、厳格な運用を盛り込む。第三者による専門の監視機関を設けることも欠かせない。

 共通番号について国民の理解がただちに得られないなら、はじめは納税者番号に絞って導入したらいい。制度の信頼を得てから年金や医療などの情報と共通化を図るのも一案だ。

 何よりも、政府が情報を悪用しないと国民に信頼されることが大前提だ。

イラン核疑惑―事態打開への日本の役割

 国際社会は、イランで稼働中のウラン濃縮施設が軍事転用される可能性がある、との危惧(きぐ)を抱いている。そのイランから、ラリジャニ国会議長が来日した。議長は、2007年秋まで核問題の交渉責任者だった。

 岡田克也外相は議長との会談で、国際社会の懸念を解消するために思い切った行動をとるべきだと促した。議長はイランは核兵器を求めておらず、「信頼して欲しい」と応じた。

 国連安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国が、イランと外交交渉を進めてきた。平和利用に限定するため、イランの低濃縮ウランを国外に搬出し、核燃料に加工して渡す案を示したが、イラン側はこれを受け入れていない。

 米国は安保理に新たな制裁決議をかける動きを見せている。イランが対決姿勢を強めれば、国際的な緊張が一気に高まりかねない。

 長年にわたって日本は、イランと比較的良好な関係を保ち、原油の1割以上をイランから輸入している。

 日本は現在、安保理の非常任理事国で、4月には議長国をつとめる。5月に開催の核不拡散条約(NPT)再検討会議を成功させ、NPTを軸にした核軍縮・不拡散を前進させるうえでも、日本がイランの核疑惑にどう対応するかは避けて通れない課題だ。

 イランでは、濃縮計画を加速してきたアフマディネジャド大統領と、宗教指導者との間で不協和音がある。議長は、核問題の決定権を持つ最高指導者ハメネイ師の信頼を得ている有力政治家だ。その議長を核問題交渉の責任者からはずしたのは大統領だ。

 イランには、議長の訪日を通じて日本と欧米諸国を分断しようとする意図があったのかもしれない。しかし、協議による問題解決が大事、との議長の発言を聞き流してもなるまい。国際社会の要請にこたえるよう、イランを説得する努力を倍加させたい。

 交渉による解決を探るために欠かせないのは、国交のない米国とイランの対話の促進である。

 米国にとって、イランとの関係悪化はイラク情勢の安定に悪影響を及ぼす。アフガニスタンでアルカイダを封じ込めるためにもイランの協力が必要だ。米ロ核軍縮交渉は、米国がイラン向けのミサイル防衛計画を変更したことで前進した。今後、イランの核開発への懸念が強まれば、大詰めの交渉を行っている米ロ核軍縮交渉が暗礁に乗り上げかねない。

 こうした影響の広がりを考えれば、米国とイランの仲立ち役を日本が果たす道を真剣に探るべきだ。

 イスラエルが先走ってイランの核施設を攻撃する危険もゼロではない。日米が協力して、イスラエルに自制を求めることも重要である。

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