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天声人語

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2010年2月26日(金)付

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 日本の自動車史で初の純国産といえるのは、トヨタ自動車が1955(昭和30)年に出したクラウンだろう。3年後には、左ハンドルにして米国に輸出された。だが、パワー不足のうえ壊れやすいと不評を買い、退散の憂き目に遭う▼以来半世紀、「TOYOTA」は信頼のブランドに育った。その頭上に輝く「品質の王冠(クラウン)」が今、ずり落ちかけている。冠を両手で支えるようにして、豊田章男(とよだ・あきお)社長が米議会の公聴会に出向いた。トヨタ車の不具合をただす、自動車の国の「お白州」である▼「すべてのトヨタ車に私の名がついている。お客様に安心してほしい気持ちは誰よりも強いのです」。眼鏡の奥の、少しおびえたようなまなざしは、誠実さゆえと受け止められただろうか▼この国の自動車は日々の生活に欠かせぬ移動手段だ。技術陣には言い分もあろうが、自らの「足」に裏切られた米国民の怒りは想像に難くない。航空にせよ食品にせよ、客の命を預かる企業はつくづく怖いと思う。品質に失望したユーザーらの言動は、この上ない逆宣伝となる▼ホンダを興した本田宗一郎は、社名にわが名を冠したことを生涯悔やんだ。片や豊田喜一郎は同族経営の米フォードに親近感を抱いていたという。その孫の章男氏は、一つ間違えば世襲をとやかく言われるハンディを負う▼公聴会は政治ショーのにおいが強いが、トヨタの振る舞いには日本ブランド全体の信用がかかっている。社長以下、いく重もの緊張感を信頼回復のバネにしていくしかなかろう。冠を頂く者の宿命である。

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