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豊田社長証言―開放的経営へカイゼンを

 世界の消費者のトヨタへの信頼が、ただちに回復へと向かうわけではないだろう。トヨタ自動車の豊田章男社長の誠実さと実行力が問われるのは、むしろこれからだ。

 「リーダーシップを発揮して信頼を回復したい」。米議会下院の公聴会で証言した社長は、主力車種のアクセル関連でリコールが遅れたことを謝罪する一方、急加速とエンジンの電子制御システムの因果関係は否定した。

 豊田社長は証言の冒頭で、トヨタの基本思想に触れた。「欠陥を発見したり、失敗したりした時に、必ず一度そこで立ち止まり、徹底的に原因を追究し、修正し改善する。問題から逃げたりごまかしたりということは伝統と誇りにかけて、やらない」

 しかし、今回の問題は急速なグローバル化や製品の高度化などの変化に対して、この思想に沿って行動することに失敗した結果ともいえそうだ。

 トヨタの思想は、車や設備の開発、製造ラインを中心とする現場で培われた。問題が発生したら即座にラインを止め、不良品を出さないようにする。現場で「なぜ」を5回繰り返し、原因をさぐる。社内総動員の取り組みは、労働強化への批判を伴いつつも、トヨタの強さを支えてきた。

 ところが、製品が顧客に渡った後に発生した問題についての苦情など、消費者からの貴重な情報を全社的に生かす体制作りは後手に回ったようだ。世界規模での事業拡大を急いだため、このゆがみが拡大した。

 今回は、リコールするかどうかを判断する権限を日本の品質保証部が独占し、米国など現地の判断が生かされなかったことも対応の遅れや誤りにつながったとされる。

 製品が高度に複雑化するに従って、顧客が把握した欠陥や不具合などに関する情報の価値はますます高まる。それらを生かす開放的な経営システムをどう築くかが重要な課題だ。それが企業の成長と顧客の信頼を両立させることにつながる。

 顧客がトラブルに遭遇したら、その現場で「なぜ」を5回繰り返して対策を考える。そんな意識と仕組みづくりが必要だろう。

 企業にとっての顧客の意味や関係のあり方を根底から問い直し、「なぜ」を問いやすくする製品づくりを目指すことは、他のグローバル企業や輸出関連企業にとっても大切だ。

 トヨタを象徴する言葉として世界に知られる「カイゼン」。安全と品質や効率向上のために現場の知恵や工夫を生かす改善運動のことである。

 トヨタには、創業以来のこの危機を克服してもらいたい。リコールの遅れや急加速の原因を徹底究明するとともに、外の声に耳を傾ける経営への「カイゼン」が急務ではないだろうか。

労組と選挙―組織丸抱えの時代遅れ

 政治とカネをめぐり、こんどは民主党を支持する労働組合に厳しい目が注がれている。

 昨年の衆院選で北海道5区から当選した小林千代美氏の陣営が、北海道教職員組合(北教組)から1600万円を違法に受け取っていた疑いがあるとして、札幌地検が政治資金規正法の違反容疑で捜査を続けている。

 小林氏の選対幹部だった連合札幌元会長は、運動員に報酬を渡す約束をしたとして公選法違反の罪で一審で有罪判決を受け、控訴中だ。

 小林氏は前回落選し、資金難に苦しんでいた。「選対に任せきりだった」と言うが、問われているのは労組丸抱えのこうした選挙手法そのものだと自覚すべきだろう。

 北教組から出された資金は、組合員が返上した主任手当をプールした巨額の預金の利息などが充てられた可能性も出ているという。連合札幌元会長の判決では、過去の地方選挙や2005年の小林氏の選挙でも、連合の「裏金」が提供されたと指摘している。

 労組のこうした支出は、きちんとした手続きを経たものだったのか。組合員がチェックできるような仕組みや、組合幹部の説明責任も求められる。

 公務員は地位を利用した選挙運動を禁じられ、なかでも教員は厳しい中立性を求められる。組織力を誇る北教組で、先生による行きすぎた運動はなかったのか。そんな疑念もわく。

 近年、民主党候補を選挙で応援した労組の摘発が相次いでいる。03年の衆院選では宮城1・2区の陣営の労組幹部が、電話作戦を有償で外部委託していた。04年の参院選前には、山梨県教職員組合などでつくる政治団体が、教員から集めた寄付を収支報告書に記載していなかった。

 いまだに地方組織が弱体なため、選挙のたびに労組に依存する。この党のそんな体質が浮かび上がる。

 組合が候補者を抱え込み、半ば強制的に組合員が動員され、ときに不透明な資金が出され、違法すれすれの運動を展開する。企業ぐるみの選挙と同じ構図が続く。そうした選挙風土からは脱すべきではないか。

 政権が交代し、連合傘下の多くの労組が与党を支持する側になった。だが組合員の政治意識は多様なはずだ。

 個人の意思で選挙運動に加わり、投票するのが民主主義の大原則だ。資金や動員だけがものを言うのではなく、政策本位の選挙にしたい。

 労組が現場の声を政策に反映させようとすることは大事だが、政党との一定の緊張関係も必要だ。

 参院選を前に、小沢一郎幹事長は労組を含む支持組織固めに余念がない。労組は何より集票マシン。そんな発想であれば、時代遅れもはなはだしい。そろそろ卒業したい。

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