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2月25日付 編集手帳

 起承転結の例として、よく引かれる俗謡がある。〈大坂本町糸屋の娘/姉は十六、妹は十四/諸国大名は弓矢で殺す/糸屋の娘は目で殺す〉◆思わず引き寄せられるようなまなざしの魅力を「目で殺す」と言い表している。カーリングというスポーツの醍醐(だいご)味は、一つにはこの競技者の眼光だろう◆石の滑る軌道を測る設計技師の目、微妙な回転を加えて手を離す熟練職人の目、祈る人の目――バンクーバー冬季五輪・カーリング女子の日本代表は惜しくも8位に終わったが、多くの人が作戦と技術の精緻(せいち)を競う「目」の光を堪能したに違いない◆氷上の小さなごみに軌道が狂い、痛恨の失点をする場面もあった。〈美しく、冷酷で、無情〉とは『高い窓』のなかで探偵フィリップ・マーロウがチェスを評して語る言葉だが、“氷上のチェス”といわれるカーリングにも通じよう。眼光の消えた目から最後は悔し涙がこぼれた◆ときに呼吸をとめて石の行方を追いながら、初めて競技の面白さを知った子供たちもいたはずである。眼光に心を射抜かれたその子がいつか、日の丸を身につけて氷上に立つ日もあるだろう。

2010年2月25日01時45分  読売新聞)
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