二倍を超える一票の格差は「違憲状態」と東京高裁が示した。昨夏の衆院選をめぐり、既に二高裁が「違憲」判決を出しており、流れはできた。国会は定数配分の是正に向け、早く動きだすべきだ。
昨年の衆院選挙は、政権交代をもたらし、憲政史に新ページを刻んだ。国民はあらためて、自分が持つ「一票の価値」の重みをかみしめたはずだ。
だが、有権者数が最多の千葉4区と最少の高知3区とでは、二・三〇倍の格差があった。これでは一票の重みにも違いがある。全国で八つの高裁・高裁支部で訴訟が起こされ、昨年暮れに大阪高裁で、先月下旬に広島高裁で「違憲」の判決が出された。
東京高裁も「憲法の要請に反する状態だった」とし、違憲状態にあることを認めた。これまで最高裁は三倍を超えない限り、「合憲」としてきた。それを考えると、もはや二倍の格差自体が、憲法違反の判断基準とする流れは、ほぼ固まってきたといえる。
東京高裁が「違憲」とまで踏み込まなかったのは、「選挙制度の改正には相応の時間を要する」ためだが、二〇〇五年の国勢調査速報値で既に二倍ラインは超えていた。むしろ国会の怠慢・不作為を指弾した大阪・広島両高裁の判決の方が、国民の感覚からは納得を得られるのではないか。
三つの高裁が問題視したのは、「一人別枠方式」という定数配分だ。小選挙区の三百議席のうち、まず各都道府県に一議席を与え、残りを人口比例で配分する。過疎地域に配慮がなされる方法だが、今回も「不平等を許容する合理性は乏しい」とされた。格差拡大の根源ならば、放置はできまい。
選挙は議会制民主主義の根幹である。それだけに「投票価値の平等」という憲法の基本理念は、尊重されねばならない。一票が大きく政治情勢を動かす時代においては、より忠実に守られるべきだ。
昨年九月現在では、四十七の選挙区で格差は二倍を超えている。今年秋には国勢調査が行われるが、司法判断を踏まえれば、定数配分の見直しは必至だ。
深刻なのは参院である。神奈川県と鳥取県では五倍近い開きが生まれている。現在、各会派の代表で構成する専門委員会で格差是正の論議がなされている。今夏の参院選が目前だ。より平等な投票を求める時代に応えるべく、最善の努力を期待する。
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