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天声人語

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2010年2月25日(木)付

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 その結晶の麗姿から、雪には「六花(りっか)」の異称がある。大気中のちりに水の分子がつき、六方に伸びてゆく。ゆっくり成長した結晶ほど、大きく美しい形になるという。バンクーバーの氷上に、4年待たされた二輪の花が並んで咲いた▼冬季五輪の女子フィギュア。ショートプログラムで、韓国の金妍児(キム・ヨナ)選手が首位、浅田真央選手が2位につけた。ともに10代半ばから世界で争いながら、前回トリノは年齢制限などで出場できなかった。以来、技と美を六方に伸ばし、初舞台でまみえる結晶二つである▼先に滑った真央さんの曲は「仮面舞踏会」。ポーズをとって、曲が始まる前に4回まばたいた。仮面も緊張までは隠せない。しかし、勝負のトリプルアクセルが成功すると、社交界にデビューする少女の生気が戻った▼続いて登場した妍児さんは「007」。少し背伸びをしてボンドガールになりきり、妖(あや)しく、なまめかしく舞い切った。この競技、スポーツであり芸術であり、何よりショーなのだと得心した▼二人は、誕生日が20日違うだけの19歳で、国際大会での成績は伯仲している。両親と姉1人の家族構成も同じ、背格好までそっくりだ。妍児さんは、真央さんのことを「もう一人の私」と表現してもいる▼できすぎた背景と展開に彩られて、めったにないライバル物語がいよいよ佳境を迎える。その結末は期待の真綿にくるまれ、あすのフリー演技へと大切に運ばれた。フィクションでは再現しえない熱狂と鼓動が二人を待つだろう。だから、「4年に1度」はたまらない。

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