HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17856 Content-Type: text/html ETag: "1e6573-45c0-ecf4db80" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 23 Feb 2010 02:21:11 GMT Date: Tue, 23 Feb 2010 02:21:06 GMT Connection: close
アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
〈江戸の敵(かたき)を長崎で討つ〉の例えは、本来は「長崎が討つ」だという説がある。江戸での見せ物興行で大阪の竹細工が大評判を呼び、地元勢は面目をつぶされる。ところが長崎からのガラス細工がさらなる人気を博し、江戸の職人たちも留飲を下げた、との由来である▼外国に開かれた長崎は先取の地でもあった。「長崎で討つ」となるとその意味は消え、意外な場所や筋違いのことで恨みを晴らす例えとなる。だが、これは筋違いどころか当然の報いではないか。与党が敵を討たれた長崎知事選だ▼すべての国会議員を民主党が占める長崎。自民党系の圧勝は、現政権への不満でなくて何だろう。ガラス細工の新しさが江戸っ子を驚かせたように、参院選に先がけて風が変わったと、民主党は肝に銘じるべきだ▼本紙調査の内閣支持率は4割を切った。「政治とカネ」の当事者が十分な説明を怠ったままなのに、党内から批判が聞こえてこない不思議に、無党派層の離反は加速する。改革を見守りたい層の我慢も限界に近い。むろん、審議拒否に出るようでは自民党の支持率も上向くまい▼冒頭の「長崎が」説を付した小学館の「ことわざ大辞典」に、〈長崎の怖い雑魚〉という古語があった。遠隔地の不案内と、イワシなどの「小合(こあい)雑魚」をかけた言い回しで、何ともいえぬ恐ろしいことの意味だという▼自民はイヤ、民主もダメの政治不信。そのうち選挙も納税もばからしくなって、日本社会から活力がますます失われていく。そんな展開こそ、いま一番の「怖い雑魚」である。