鳩山由紀夫政権が公務員制度改革に乗り出した。幹部人事の柔軟化などを盛り込んでいるが、民主党が訴えてきた天下り根絶には程遠い。新たな公務員像を目指して、さらなる改革が不可欠だ。
「脱官僚依存」を掲げてきた鳩山政権にとって、公務員制度改革は最重要課題の一つといって間違いない。ところが国会に提出された国家公務員法改正案をみると、残念ながら、期待外れといわざるをえない。
目玉は幹部人事の扱いだ。これまでは霞が関の役所に就職すると、その省の人事で昇進し、退職後の天下りも出身省が面倒をみてきた。役所ごとの縦割り体制が貫徹し「省あって国なし」と呼ばれるような弊害があった。
それを部長級から次官級まで幹部候補者の名簿を一元化し、政治主導で各省庁にまたがって幹部を登用できるように改める。
たしかに、従来よりは幹部を実力優先で活用できるようになるかもしれない。だが、基本的には官僚同士で幹部を入れ替えるだけだ。新設する内閣人事局も物足りない。自民党政権時代でさえ人事院や財務省、総務省などから関連部局を内閣人事局に移す案が検討されたが、今回は見送られた。
民主党政権は総選挙の政権公約(マニフェスト)で国家公務員人件費の二割削減を約束している。それには給与や定数の見直しが不可欠になる。実現するには強力な内閣人事局をつくる必要があったはずだが、各省に人事機能を散在させたままで官僚の抵抗を排除できるだろうか。
天下り根絶についても、官民人材交流センターを民間人材登用・再就職適正化センターと名称を変えて、あっせん機能を狭く限定した程度にとどまった。
日本郵政社長に斎藤次郎元大蔵事務次官を起用した例が象徴したように、閣僚や役所OBによる再就職あっせんが問題になったが、そうした裏道を使った天下りへの対策も示されなかった。
優秀な官僚をどう育て、活用していくか。それは官僚自身の働きがいや、ひいては日本という国の潜在力にも関係する。
官が官だけの閉じた世界で完結するような仕組みでは、もはや世界と競争していけない。民間では当たり前の能力・実績主義を徹底させたうえで、政治任用や官民交流の拡大が不可欠である。
給与と定数、組織の見直しなど積み残した課題は秋にも第二弾として抜本改革に着手すべきだ。
この記事を印刷する