春節と呼ばれる旧正月からちょうど1週間。中国はいま、年に一度の「民族大移動」のさなかにある。父母や親族とのだんらんを求めて故郷に戻っていた出稼ぎ労働者たちが、再び職を求めて都会に向かう流れが、ピークを迎えている。
▼中国政府の予測では、春節をはさんだ1月下旬から3月10日までに交通機関を利用する人はのべ25億人を超える。長距離移動の主役である鉄道を利用する人に限っても、その数は2億を上回る。混雑のすさまじさは日本の終戦直後の買い出し列車を思い出させるといわれるほどで、乗客のストレスは大変なものだ。
▼切符を手に入れるのも一苦労らしい。ダフ屋が横行し、彼らは1年分の生活費をこの時期に稼ぎ出すという。故郷で春節を過ごしたいという人々の欲求がいかに強いかがわかる。その中国でも、経済発展と社会の多様化で、伝統と異なる旧正月の過ごし方が広がりつつある。豊かな人々の間では海外旅行が増えた。
▼消費が低迷する日本や欧米諸国では、中国からの旅行客の買い物が盛り上がり、干天の慈雨となっている。「春節商戦」といえば、帰省にあわせて消費財を大量に買い込む中国国内での販売競争のことだった。これからは、世界中の百貨店や専門店が、旧正月休みの来訪者に照準をあわせるようになるのだろうか。