HTTP/1.0 200 OK Age: 62 Accept-Ranges: bytes Date: Mon, 22 Feb 2010 01:20:05 GMT Content-Length: 7633 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.3 Last-Modified: Sun, 21 Feb 2010 15:21:39 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(2/22)

 「街を美しくしようなんて、けしからん」。40年ほど前、建設省(現国土交通省)の人にしかられたときの言葉を、田村明さんは生涯忘れなかった。民間企業から横浜市の職員に転じ、都市デザインの仕事を始めたばかりのころの話だ。

▼市の中心に高速道路をつくるという。国の案では街のど真ん中を高架が走る。道は地下に埋め、地上に公園を造りたいと頼んだとき冒頭のせりふが出た。景観にカネは使えない、東京の日本橋すら高架で覆ったのだと。何とか粘ってひっくり返した。その後も横浜市は景観整備に力を入れ、観光客の注目を高めた。

▼建設省が国土交通省となり、そこから観光庁が生まれた。海外からもどんどん観光客を呼ぼう。そんな構想だが、不況もあり思惑ほど数字は伸びない。そんな中で雪の北海道や昔ながらの街並みには、根強い人気があるという。人を引きつけるのは手つかずの自然、街の持つ個性と美しさ、生活文化の厚みらしい。

▼田村さんは後に大学で教べんを執り著作を出版する傍ら、各地で街づくりの勉強会に足を運び、語り続けた。生活する人々が誇りと愛情を持って育てた景観でなければ訪れる人も感動しない、と田村さん。暮らして楽しく、愛着を持て、人も呼べる街づくりとは。難しい宿題を残し、この冬、83歳で生涯を閉じた。

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