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かぐや姫のヒット曲「赤ちょうちん」の一節にある。〈雨がつづくと仕事もせずに/キャベツばかりをかじってた……〉。喜多條忠(きたじょう・まこと)さんの詞は、若い二人のその日暮らしをうたう。前作の「神田川」と同様、いわゆる四畳半フォークの香りが強い▼曲中ではキャベツが貧しさを語るが、昨今、節約のシンボルは別の野菜らしい。モヤシが家計と食卓を支えていると読める記事に、三十数年前の歌が浮かんだ次第である▼総務省の家計調査によると、2009年の世帯当たりの消費支出は2年続けて落ち込んだ。収入が減り、食費が切り詰められる中、モヤシへの出費は07年半ばからずっと前年同期を上回っている。去年は1割を超す伸びだったという▼確かにモヤシは、みずみずしい食感、豊かな栄養価とともに、安値安定が売り物だ。とはいえ三食こればかりとはいかない。野菜炒(いた)めのように、脇役で使われることが多い。焼きそばあたりでは、増量の密命を帯びて縁の下にもぐるような役どころである▼作家の椎名誠さんに、健康診断で痛風の恐れを言われ、モヤシ料理にはまる作品がある。この野菜を愛(いと)おしむ「私」は考える。〈野菜炒めだけでなく、モヤシが全体的にその実力のわりには軽んぜられた地位にあるのは「その安さ」ということも関係あるのではないか〉▼その安さから軽くあしらわれ、その安さゆえに台所のピンチを救う。脇役が活躍するドラマも悪くはないが、細身の色白がやけに頼もしく見える目下の悲喜劇。政治という名の主役はどう眺めているのやら。