HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 21 Feb 2010 00:15:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:「春告魚」といえば、釣り好きはメバルを思い浮かべるかもしれ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年2月21日

 「春告魚」といえば、釣り好きはメバルを思い浮かべるかもしれないが、かつて北の海で春を告げる魚はニシンだった。春になると、北海道の日本海沿岸には大群が産卵に押し寄せた▼雌の産卵場所が雄の精子で白く染まる「群来(くき)」は季節の風物詩。ところが最盛期に百万トン近かった水揚げは、ニシンが沿岸に姿を見せなくなった昭和三十年代以降は、激減してしまう▼乱獲や水温、海流の変化などが原因に挙げられるが、はっきりしない。<鰊(にしん)群来今なし残る浪(なみ)と唄(うた)>(福田蓼汀(りょうてい))。網元の「ニシン御殿」が並んだのは遠い昔の話である▼作家の渡辺淳一さんは元漁師の老人との会話を『ソーラン節』という随筆につづっている。<昔鍛えた喉(のど)で、ソーラン節でもきかせて下さい>という渡辺さんに、老人は不快そうに吐き捨てた▼<あんな歌、思い出したくもねえ><俺達(おれたち)を眠らせないために、歌わせやがって…>。最盛期を知る老人にとって、ソーラン節は「過酷な労働を思い出させるだけの暗く憂鬱(ゆううつ)な歌でしかないようである」(『北国通信』)▼いまや運動会の「定番」であるソーラン節は、ニシンの網を絞る出稼ぎの漁師が不眠不休で働くための歌だったのだ。近年はニシンが戻りつつあり豊漁が続く。先日も石狩湾で大規模な群来が確認されたが、昔のようにソーラン節を歌いながら漁をすることはないという。

 

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