HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 20 Feb 2010 20:16:21 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:<打ち倒す者は強いが、起き上がる者はもっと強い>。クーベル…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年2月20日

 <打ち倒す者は強いが、起き上がる者はもっと強い>。クーベルタン男爵の故国フランスの俚諺(りげん)である▼バンクーバー五輪のフィギュアスケート男子。高橋大輔選手はフリー演技で序盤、いきなり4回転ジャンプを失敗、転倒した。何かの力に打ち倒されたかにも見えたが、すぐ起き上がって、その後を見事に滑り、日本に男子フィギュア史上初のメダルをもたらした▼織田信成選手は、転びはしなかったが、靴ひもが切れるアクシデントに見舞われた。<人は転ぶと石のせいにする。石がなければ坂のせいにする。坂がなければ靴のせいにする。人は、なかなか自分のせいにしない>。そんなユダヤの格言を裏切って、この戦国武将の末裔(まつえい)は、試合後、「自分の責任」と泣いた▼中断後、ひもを直して演技を再開、チャプリンの映画音楽のメドレーに乗って残りを滑りきった。前半の笑顔は消え、哀(かな)しげな表情。観衆は大きな喝采(かっさい)を送ったが、喜劇王の作品をも思わせる切ない展開になってしまった▼「ショックすぎて言葉にならない」と語った彼の気持ちは察して余りある。だが、次がないわけではない。最高傑作は、と問われた時のチャプリンの有名な返答を思い出す。「ネクスト・ワン(次回作)」▼今度は打ち倒された。だが、きっと織田選手は起き上がるだろう。彼の“最高傑作”もネクスト・ワンだと信じたい。

 

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