米国のオバマ大統領は18日、チベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世と会談した。1月に台湾への武器売却を決めたのに続いて中国の強い反対を振り切った形で、米中関係は一段とぎくしゃくしそうである。
ホワイトハウスによると会談で大統領は「チベットの人々の人権擁護を強く支持する」と述べた。対中関係を重視する大統領は就任以来、中国の人権問題への言及に慎重だったが、米国内で批判が高まり強い姿勢に転じざるを得なかったようだ。
ただ、外国首脳との会談で通常使用する大統領執務室ではなく私的な色合いの濃い部屋で会談するなど、中国への一定の配慮も示した。
中国外務省の馬朝旭報道局長は19日未明に「強い不満と断固たる反対」を表明する談話を発表した。「米中関係を著しく損なう」とも警告したが、台湾への武器売却の際とは異なり報復措置には触れなかった。中国政府が最近、米空母ニミッツの香港寄港を認めたこともあり、米国との深刻な対立は避けたいのが本音、との受け止め方が多い。
世界経済はまだ金融危機の影響を克服していないうえ、北朝鮮とイランの核開発や地球温暖化など米国と中国が決定的な役割を担う重大な国際問題は多い。米中間には通商摩擦の火だねもあるが、今後も双方は自制した対応を保って国際問題に取り組んでいくのが望ましい。
同時に、中国には人権問題をめぐる国際社会の懸念に耳を傾ける姿勢への転換を求めたい。
一党独裁の放棄などを訴えた政治文書「憲章08」の起草者である暁波氏、チベット庶民の「生の声」を記録映画にまとめたドンドゥプ・ワンチェン氏、08年の四川大地震で倒壊した建物の手抜き工事を追究する活動を展開した譚作人氏――。
昨年末以来「国家政権転覆扇動罪」という罪名で懲役5〜11年の判決を受けた人々だ。今月はじめには、09年に大問題となった粉ミルク汚染事件の被害者代表として政府の補償を求めていた趙連海氏が「公共秩序騒乱罪」で起訴された。
共産党政権は人権の抑圧を強めているようにみえる。それが世界の不信を招いていることを胡錦濤国家主席ら指導部は理解すべきである。