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春秋(2/20)

 遠く3300年前の難事件を最新技術を駆使して再捜査し、真相に一歩迫った。そんなイメージだろうか。古代エジプト王ツタンカーメンのミイラをDNA鑑定したら、マラリア原虫のDNAが見つかり、病死らしいと分かったそうだ。

▼父と母はきょうだい同士だった。19歳ごろに死ぬ前、晩年になるとマラリアに骨の異常も重なってつえをつかずには歩けなかった。発表された研究成果のあれこれは、凄絶(せいぜつ)な生涯のミステリーを薄皮をはぐように解いている。特に死因は関心を集めていた。若い王の周囲には犯罪のにおいが漂っていたからである。

▼かねて王には事故、病死にまじり暗殺説があった。「誰がツタンカーメンを殺したか」を書いた米国のエジプト学者ブライアーは、宰相だったアイに嫌疑をかけた。状況証拠を積み上げ、王位への野望からツタンカーメンを殺し、王になって妃(きさき)までわがものにしたという、なかなか説得力ある筋書きを描いている。

▼発熱や貧血などマラリアの症状は、この時代よりずっと前のエジプトでパピルスに記されているという。王がこの疫病に倒れてもおかしくない。死因論争がこれにて一件落着かどうかは分からないが、アイは冤罪(えんざい)の可能性が高まったとはいえるだろう。3300年を隔ててミイラと対話する。思えば不思議である。

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