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氷がとけたら何になる? テストである子が「水になる」ではなく「春になる」と答えたという話を、先ごろの小欄で書いた。伝聞だったので「虚実はおいて」と断ったら、子ども時代を札幌で過ごしたという60代の女性から便りをいただいた▼セピア色をした「りかのてすと」のカラーコピーが入っていた。「ゆきはとけるとなにになる」の問いに「つちがでてはるになります」と鉛筆で書かれている。残念ながらバツをもらい、全体の点数は85点。お母さんが取り置いていたのを、遺品の中から見つけたそうだ▼電話で話をお聞きした。子ども時代、クロッカスなどの球根を庭に植えた。春になると真っ先に球根の上の雪がとけ、丸く小さく地面が見えた。やがて美しい緑の芽が出る。その印象が答案になったのでしょう、と話しておられた▼早春の風はまだ冷たいが、石垣りんの詩「二月のあかり」を思い出す。〈二月には 土の中にあかりがともる。……草の芽や 球根たちが出発する その用意をして上げるために 土の中でも お母さんが目をさましている〉▼植物ばかりではない。都内の井の頭自然文化園を訪ねたら、越冬中の昆虫を観察できる展示があった。落ち葉の下や土の中に様々な命が息づいている。「お母さん」が小さきものたちを起こして回る日も、遠くはない▼テストで「春になる」と答えた人は他にもおられることだろう。きのうは二十四節気の雨水だった。水ぬるみ始めるころ。もうひと辛抱、ふた辛抱で、幼い答えを正解とすべく、季節がめぐる。