日本の調査捕鯨船団の監視船に米環境保護団体の活動家が侵入した。明らかな不法行為であり身柄の拘束は当然だ。政府は関係国へ事態の周知徹底を図るとともに、冷静かつ厳正に処分すべきだ。
南極海で繰り返される「シー・シェパード(SS)」の妨害はテロ行為に等しい。ロープを投げ入れて捕鯨船のスクリューに絡ませようとしたりレーザー光線を照射した。さらに薬品を投げ込み船員にけがをさせるなど、今年は極めて悪質だ。
さすがに反捕鯨国でも批判の声が上がった。今回拘束されたのはニュージーランド人だが、同国のキー首相は記者会見して「このような行為は極めて危険で、当事者はより冷静にならなければならない」と語った。
拘束された活動家は現在、捕鯨監視船に乗って日本に向かっている。赤松広隆農相は「SSの暴力行為はエスカレートしており、海上保安庁に引き渡して厳正に対応したい」と表明。平野博文官房長官も日本国内で事情聴取する考えを明らかにした。
調査捕鯨では二年前にもSSの活動家二人が調査船に侵入したがすぐに釈放した経緯がある。今回は日本人船員に被害が出ており、法治国家として冷静に事実を明らかにして厳正に対処すべきだ。
重要なことはニュージーランドだけでなく捕鯨抗議船の寄港地となっているオーストラリアや、SSの抗議船が船籍を置いているオランダなど、反捕鯨・捕鯨支持双方の関係国に、今回の事実を迅速・正確に伝えることだ。インターネットなどを使ったSSとの情報戦に後れをとってはならない。
反捕鯨国ではオランダは先月下旬、抗議船の船籍をはく奪できる船籍法改正案を議会に提出した。成立は不透明だけに日本側は今回の事件を強く訴えるべきだ。
六月下旬にモロッコで、国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会が開かれる。SSに対する非難声明だけでなく、当事国による妨害行為を規制する必要性がますます重要になった。
現在の加盟国は八十八カ国。その六割近くが反捕鯨国で、日本など捕鯨国はやや押され気味だ。しかし調査捕鯨は国際法規で認められた加盟国の権利であり、IWC自体が本来、捕鯨と資源保護の両立を目指す組織である。
公海上での不法行為に対してどんな対策が有効か。海上保安庁の船舶派遣も含めて再発防止策をしっかりと検討してもらいたい。
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