公正取引委員会は、資源大手の豪英系BHPビリトンとリオ・ティントが計画する鉄鉱石の事業統合を審査する。日本は鉄鉱石の6割を両社から調達している。資源大手が進める規模拡大の影響は無視できない。統合が公正な競争を阻害しないか厳格な審査が必要だ。
BHPは2007年にリオの買収を狙ったが、金融危機の影響などで08年末に断念している。初の海外案件として動いた公取委も、買収撤回で審査を打ち切った。
しかしBHPは昨年、改めて主力鉄鉱石事業の統合でリオと合意した。新たな計画は鉱山開発と生産の統合に絞り、販売は独自に維持する。各国・地域の独禁当局の認可を得やすくするのが狙いだ。
既に鉄鉱石の国際市場はBHPとリオ、ブラジルのヴァーレ3社による寡占状態にある。BHPとリオが統合すれば世界貿易量で4割、リオへの依存度が高い日本の輸入量では6割に及ぶ。
BHPは日本などの鉄鋼各社に従来の1年ごとの交渉から、スポット(当用買い)市場などに連動した値決めへの変更を求めるなど独自性を見せる。ただ鉄鉱石が供給過剰になって値下がりした場合は、統合した2社が同時に減産して価格を支える。強力に減産すれば国際価格の押し上げも可能だ。
公取委は両社からの提出書類がそろい次第、審査に入る方針だが、既に1月下旬に調査を始めた欧州連合(EU)と比べ動きは遅い。市場関係者によると、EUは前回の買収計画に続き、今回の生産統合も正式合意前から欧州に不利がないよう両社をけん制している。
資源大手が一段の規模拡大を進める背景には、合理化で経費を下げる目的に加え、買い手として巨大化する中国への対抗がある。
能力増強が止まらない中国の鉄鋼産業は昨年、粗鋼生産が5億6千万トンと世界の5割に迫った。生産量が1億トン規模にとどまる日本は、価格交渉や原料確保で中国の背後に追いやられがちだ。
中国と資源大手が交渉力を争う中で、日本に不公平な条件があってはならない。政府は海外の資源市場をもっと注視すべきだ。