2009年10〜12月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除く実質で、年率に直して前期を4.6%上回った。3四半期連続のプラス成長で伸び率も市場の予測を上回った。それでも、経済活動の水準そのものはなお低い。
実質成長率が持ち直したのは、内需がプラスに転じたおかげだ。環境対応のクルマや家電の購入を支援する政策で消費が増え、企業の設備投資も7四半期ぶりに増えた。中国など新興国の需要が予想以上に強く、輸出の増勢も続いた。内需、外需がともにプラスに寄与したのは金融危機後で初めてだ。
5%に迫る成長率といっても、企業や消費者の実感にはそぐわないだろう。GDPの水準は08年1〜3月期のピーク時を6%下回り、年換算額で約35兆円少ない。09年暦年でみると実質成長率は前年比マイナス5%と、戦後最悪の落ち込みである。
経済の水準が低迷しているのに加え、物価の下落も一段と進んでいる。10〜12月期の物価の動きを反映する「GDPデフレーター」は前年同期比マイナス3%と過去最大の下落を記録した。需要不振で安売り競争が続く。昨年冬の賞与減額の影響も少なくあるまい。
名目成長率は年率0.9%増とプラスに戻ったが、油断はできない。09年の名目GDPは辛うじて中国を上回り世界2位を守ったが、10年には日中が逆転するとの見方が多い。
目先は統計のアヤも小さくない。内閣府はGDPの算出に際し季節による変動をならす方法を一部見直した。08年秋の金融危機による異常な外需の落ち込みを、季節要因と誤らないようにした。
統計の精度を増すうえで適切な措置といえようが、09年4〜6月期の実質成長率は高くなり、7〜9月期は0.03%増へ下方修正された。10〜12月期は反動で成長率が高くなったことも考えられる。
景気が二番底に陥る懸念はやや薄らいだものの、民間需要が主役となった自律回復はなお遠い。消費喚起策の息切れや、米欧の金融市場の不安定さなどリスクへの警戒も欠かせない。目先の好転に油断せず、政府は強力な成長戦略の提示など、経済への目配りを怠ってはならない。